ワット・アルン

ワット・アルン(Wat Arun)はメナム川の西岸にある双子都市の呑武里城に位置しています。ワット・アルンはタイの著名な寺院だけではなく、タイの国王の家族に属した寺院の一つでもあります。大城王朝に起工されたワット・アルンは初めに「皇冠寺」と呼ばれ、後で「昌寺」とも改名されました。ワット・アルンは黎明寺(Temple of the Dawn)とも呼ばれ、タイの41代目の国王である、民族英雄と称えられた鄭昭を記念するために建てた寺院です。鄭昭は本籍が中国広東省であり、1760年に大城王朝がビルマの侵略者に侵入された時、鄭昭は自国の領土を守ろうとして兵隊を率いて必死に抵抗しました。その甲斐もあり、敵を撃退して国を守ったことから、人々に尊敬されてシャム国の国王に推奨されました。鄭昭は1767年12月に王座に就き、呑武里城に遷都して15年間にわたり国を治めました。彼が尽くしたことから、国が強大になりました。そして当時の清の国と友好関係を発展させていました。話によると鄭王は1768年に呑武里城に着いた時に、ちょうど朝日が昇り、黎明を迎えたことで記念に建てた寺院を黎明寺(Temple of the Dawn)と命名したと言います。「黎明寺」についてのもう一つの言い方は境内に高さ79メートルにも及ぶ尖塔が朝いち早く太陽の光を浴びたことから命名したわけです。1842年に建てたこの大乗仏教舎利塔は外側に複雑な模様が施され、様々な色彩に富む焼き物、ガラスおよび貝殻を鏤めました。現在タイの一番規模の大きい大乗仏教の仏塔になり、周囲にある四つの塔と呼応して美しい景観をなしています。そのためタイの「エッフェル塔」とも呼ばれ、観光客に親しまれています。塔の上までに上るとメナム川の対岸にあるバンコクを眺めることができます。

1780年、ラオスから運ばれた玉仏はここで初めて祭られたことがあり、その後、バンコクの玉佛寺に移されていきました。1809から1824年にかけてバンコク王朝のラーマ2世はワット・アルンを立て直そうとして中央にあるビッグタワーと周辺にある四角塔群を増築しました。そして寺院に新しい名前を授けましたが、やはり「黎明」のニュアンスが含まれました。1824から1851年にかけてラーマ3世が引き続き寺院の工事を増やし、塔などの建物の完備に至りました。ラーマ4世がさらに塔を高くした上、規模も大きくしました。そこで現在見られる高さ75メートル、周囲に付きまとう精緻なミニ塔の群れが定着したわけです。これらの塔を乗せた台座に動物や神様の模様が刻まれ、とても手が込んでいます。それに煉瓦で築かれた塔の上に中国から輸入した数多くの彩りのタイルやガラスの玉がぎっしりと鏤められています。党の頂上が金メッキになっていることから「塔林」と呼ばれたこれらの塔が青空に輝いて見えます。中央のビッグ塔の中に頂上まで登れる階段が敷かれ、そこからメナム川の向こうにあるバンコク、グランドパレス、ワット・プラケオ、ワット・ポーなどが眺めることができます。塔の下にラーマ2世の遺体が納められています。周囲にある四角塔群にそれぞれ菩薩の像や仏陀の生涯についての絵巻が書かれています。

ワット・アルンのメイン塔の中に鄭昭の画像や遺物などが陳列され、中国らしい提灯も飾りつけられています。後ろの部屋に鄭王の生前に使ったとされたベッドが置かれています。

毎年、国王と大臣は船でメナム川を下り、ワット・アルンに来て神様を祭る儀式を挙げることになります。その時国王から黄色の袈裟を寺院の僧侶に布施するとします。これを「僧侶の換衣節」と呼ばれ、タイの仏教徒にとって最も大切な祭日です毎年12月に行われる王室祭典もワット・アルンの最大規模の儀式であり、タイの王室の最も重要な祭日でもあります。ワット・アルンを通じていかに中国とタイとの「親戚関係」があることも分かるのです。